ペット譲渡契約書に入れておくべき重要項目とは?行政書士が解説
この記事の要点
- 「譲渡したのに返してと言われた」「病気を知らされていなかった」といったトラブルの多くは、契約書を交わしていない、または内容が不十分なことが原因です。
- 契約書には、当事者の特定・個体情報・譲渡条件・飼育条件・健康状態・返還条件を盛り込みます。
- 2022年6月から、犬猫の譲渡時にはマイクロチップの登録情報の変更(犬猫等所有者登録の変更)が必要になりました。
- 有償で反復継続して譲渡を行う場合は、動物取扱業の登録が必要になることがあります。
「善意」だけでは守れないこと
行政書士やなぎさわオフィスです。当オフィスはさいたま市を拠点に、ペットに関わる法務サポートを行っております。
最近メディアの影響もあり、近年は保護犬や保護猫の譲渡に対する関心が高まっています。当オフィスへのご相談でも、譲渡手続や契約内容についてのお問い合わせをお寄せいただくようになりました。
ペットの譲渡は、里親様・譲渡側双方の「ペットの幸せを願う気持ち」によって成り立ちます。しかし、将来的な飼育費用や医療方針、万が一の返還条件など、具体的な合意がないまま善意だけに頼ると、大きなトラブルへ発展するリスクがあります。
お互いに後悔のない契約を結び、新しい家族を安心して迎えるために。今回は「譲渡契約書に盛り込みたい必須項目」を分かりやすくご紹介します。
1. 契約の当事者を明確にする
譲渡する側(譲渡者)と譲り受ける側(譲受者)を、正確に特定します。
- 氏名(法人の場合は法人名)
- 住所
- 連絡先(電話番号・メールアドレス)
- 署名・押印
SNSや里親募集サイトでのやり取りは、匿名性が高くなりがちです。契約書で身元を確認し合うことが、信頼関係の第一歩になります。ここはしっかりと運転免許証など身分証の提示を求めることも、トラブル予防に有効です。
2. ペットを特定する(個体情報)
種類・特徴・個体識別情報を、できるだけ具体的に記載します。
- 種類(犬種・猫種など)
- 性別
- 生年月日(推定の場合はその旨を記載)
- 毛色、特徴
- マイクロチップ番号
- 狂犬病予防接種の有無(接種日・動物病院名)
マイクロチップ番号を記載しておくと、「この子は誰のものか」という争いを防ぎやすくなります。 2022年6月の法改正で、ブリーダーやペットショップなど動物取扱業者が扱う犬猫にはマイクロチップの装着・登録が義務化されました。個人間の譲渡でも、装着済みの場合は、環境大臣が指定する登録機関(現在は「犬と猫のマイクロチップ情報登録」)での所有者情報の変更手続きを忘れずに行いましょう。
あと、個体情報の特定という点では、譲渡時の写真などもしっかりと撮影しておくことも重要です。
3. 譲渡条件(譲渡料・引き渡し方法)
譲渡が無償か有償かを明記します。
- 無償譲渡の場合:「譲渡料は無償とする」
- 有償譲渡の場合:「譲渡料〇〇円を支払う」「支払方法・期日」
引き渡しの方法や場所も書いておきましょう(例:「譲渡者の自宅で引き渡す」「譲受者が指定の場所まで受け取りに来る」など)。曖昧にすると、「聞いていた条件と違う」といったトラブルにつながります。
なお、営利目的で反復継続してペットの譲渡・販売を行う場合は、第一種動物取扱業の登録が必要になることがあります。保護活動としての譲渡でも、頭数や頻度によっては該当する可能性があるため、心配な場合は自治体の窓口や専門家に確認しましょう。
4. 飼育条件・飼養環境の約束
譲渡後の飼育条件は、トラブル防止の核心部分です。
- 適正な環境(室内飼育など)で飼うこと
- 飼育放棄・虐待・転売をしないこと
- 避妊・去勢手術を行うこと(実施済みの場合はその旨、未実施の場合は期限)
- 医療費・飼育費は譲受者が負担すること
- 定期的な報告を求める場合はその頻度・方法(写真、健康状態など)
とくに「繁殖目的での譲渡・使用の禁止」「第三者への無断譲渡(再譲渡)の禁止」は、悪質な転売を防ぐうえで重要な条項です。
5. 健康状態・医療履歴を明示する
譲渡時に把握している健康状態は、できる限り正確に記載します。
- 直近の健康診断の結果(実施日、異常の有無)
- ワクチン接種の記録(接種日・種類)
- 持病・疾患の有無
- 投薬や治療中の内容
「聞いていなかった」という主張は、損害賠償請求の原因になりかねません。獣医師の診断書やワクチン証明書の写しを添付すると、契約の信頼性が高まります。ただし、譲渡者が把握していない病気まで保証することはできません。「現時点で判明している範囲」であることも明記しておくと安心です。
6. 契約解除・返還条件
譲渡は「渡したら終わり」ではありません。約束が守られない場合に備え、返還や契約解除の条件を定めておきます。
- 虐待、飼育放棄、無断の転売・再譲渡が判明した場合、譲渡者は返還を求めることができる
- 譲受者が虚偽の申告をしていた場合、契約を解除できる
- 飼育が困難になった場合は、まず譲渡者に相談すること
こうした条項があるだけで、トラブルが起きたときの対応がスムーズになります。
7. 契約日・署名・押印
契約日と署名(押印)を入れます。電子署名やクラウドサインも有効ですが、紙面での契約は、双方に「きちんと約束した」という安心感を持ってもらいやすい面があります。立会人(第三者)を置くと、より信頼性が高まります。
8. 添付しておきたい書類
- 健康診断書、ワクチン証明書の写し
- 譲渡時の写真
- マイクロチップ登録証
- 身分証の写し(相互確認のため)
裏付けとなる資料を残しておくことで、契約全体の信頼性が高まります。
契約書があっても防げないこと
契約書は有効な備えですが、万能ではありません。相手が遠方に転居して連絡が取れなくなったり、そもそも約束を守る意思がなかったりする場合は、契約書があっても実効性に限界があります。契約前の面談や、飼育環境の確認など、書面以外の見極めもあわせて大切にしましょう。
行政書士ができること・できないこと
行政書士やなぎさわオフィスでは、譲渡契約書やリース契約書、売買契約書の作成をサポートできます。一方で、契約後に相手が約束を守らず、示談交渉や訴訟が必要になった場合の代理は弁護士の業務です。状況に応じて、専門家との連携をご案内します。
よくある質問(Q&A)
Q. 無償の譲渡でも契約書は必要ですか?
A. 法律上の義務ではありませんが、無償だからこそ口約束になりやすく、トラブルの原因になります。金額の大小にかかわらず作成をおすすめします。
Q. マイクロチップが入っていない場合はどうすればよいですか?
A. 個人間の譲渡では装着の義務はありませんが、迷子や所有権をめぐるトラブルの予防に有効です。装着済みの場合は、登録機関での所有者情報の変更を忘れずに行いましょう。
Q. 保護活動として複数の犬猫を譲渡していますが、登録は必要ですか?
A. 営利性や反復継続性によって判断が変わります。心配な場合は、自治体の窓口にご相談ください。「ペットホテル開業」の記事に、動物取扱業の登録に関する解説をしてますので是非ご覧ください。
Q. 譲渡後に虐待が疑われる場合、どうすればよいですか?
A. 契約書に返還条項があれば、それに基づいて返還を求めます。悪質な場合は、動物愛護管理法違反として自治体や警察への相談も検討します。
ペット法務のことなら行政書士やなぎさわオフィスへ
ペットの譲渡は、ペットの幸せを願う気持ちから生まれるものです。だからこそ、書面でしっかり約束を交わすことが、譲渡者・譲受者・そしてペット自身を守ることにつながります。行政書士やなぎさわオフィスは、さいたま市を拠点に、ペット譲渡契約書やリース契約書の作成のほか、ペット信託や遺言書、動物取扱業の登録申請、特定動物の飼養許可申請、ペットの事故・近隣トラブルの書面作成など、ペット法務を幅広くサポートしています。
ご相談内容が整理できていなくても大丈夫です。まずはお気軽にお問い合わせください。
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