2026年版・賃貸オーナーが使える補助金まとめ|「対象は入居者」という落とし穴に注意
これまで敷金精算、ペット可導入、防犯対策とテーマを重ねてきましたが、最終回となる今回は「補助金・助成金」を取り上げます。実はこのテーマには、賃貸オーナーが調べ始めると最初に戸惑うポイントがあります。それは、「住宅関連の補助金」と検索して見つかる制度の多くが、オーナー自身ではなく入居者本人を対象にしているケースが少なくないという点です。
たとえば防犯カメラの設置補助金は、多くの自治体で「実際に居住している世帯主」が対象とされており、オーナーが設置した場合は補助対象外と明記されています。この「誰が申請できるのか」という前提を取り違えると、せっかく調べた制度が結局使えないという事態になりかねません。今回は、この点を踏まえつつ、賃貸オーナーが実際に活用できる制度を整理していきます。
この記事でわかること
- オーナーが直接活用できる省エネリフォーム関連の補助制度
- 賃貸の給湯器交換に特化した専用の補助金
- 子育て世帯向けの住宅改修支援で、オーナーが申請者になれる制度
- 防犯カメラなどの補助金で見落としがちな「対象者」の注意点
「みらいエコ住宅2026事業」——省エネリフォームの中核制度
2026年度の住宅関連補助金の中心となるのが、国土交通省・経済産業省・環境省の3省連携による「みらいエコ住宅2026事業」です。これは2025年度まで実施されていた「子育てグリーン住宅支援事業」の後継制度で、名称から「子育て」が外れた通り、世帯属性を問わずすべての所有者が対象となります。
リフォームにおける補助額は、改修前の住宅の省エネ性能と、改修後に達成する基準の組み合わせによって決まる仕組みになっています。具体的には、開口部・躯体の断熱改修、エコ住宅設備の設置という必須工事の組み合わせに応じて、上限額は40万円から100万円まで設定されています。1992年基準を満たしていない古い住宅ほど、改修によって到達できる基準の幅が大きくなるため、補助上限が高く設定されているのが特徴です。築年数の古い賃貸物件を所有しているオーナーにとっては、むしろ有利な制度設計だと言えるでしょう。
注意したいのは、2026年度からは開口部、つまり窓の断熱改修を含む工事が必須とされている点です。水回り設備の交換だけを単体で行う工事では申請できず、内窓の設置など窓関連の改修を組み合わせる必要があります。また、申請できるのはリフォーム工事を行う事業者であり、工事を発注するオーナー本人が直接申請することはできません。利用を検討する場合は、本事業に登録された施工事業者に依頼することが前提になります。
「賃貸集合給湯省エネ2026事業」——賃貸オーナーに特化した制度
「みらいエコ住宅2026事業」と並んで、賃貸オーナーにとって特に注目すべきなのが「賃貸集合給湯省エネ2026事業」です。これは経済産業省が所管する制度で、既存の賃貸集合住宅に設置されている従来型の給湯器を、エコジョーズやエコフィールといった高効率給湯器に取り替える際に活用できます。
補助額は機種によって定められており、追い焚き機能のない機種への取り替えで1台あたり5万円、追い焚き機能のある機種への取り替えで1台あたり7万円が基本額となります。共用廊下を横断してドレン配管を敷設する工事や、浴室への排水工事を伴う場合は、さらに加算された補助額が設定されています。
この制度の特徴は、補助金が給湯器の交換を行う事業者の申請に基づいて交付され、その全額が賃貸オーナーに還元されることが条件とされている点です。つまり、制度上の申請者は施工事業者であっても、実質的な受益者はオーナーという設計になっています。複数戸の給湯器を一斉に交換する大規模なリフォームを検討している場合、この制度を活用することで実質的な工事コストを抑えられる可能性があります。給湯器は経年で確実に交換が必要になる設備であるだけに、計画的なタイミングでの活用を検討する価値があるでしょう。
「子育て支援型共同住宅推進事業」——オーナーが直接申請できる子育て支援制度
子育て世帯向けの住宅支援というと、入居者本人が申請するイメージを持たれがちですが、国土交通省の「子育て支援型共同住宅推進事業」は、賃貸オーナーやサブリース事業者が申請者となれる制度です。
この事業は、共同住宅における子どもの事故防止や防犯対策に資する改修、子育て世帯同士の交流を生み出す取り組みを支援するもので、賃貸住宅の新築・改修の両方が対象となります。たとえば、子育て世帯の入居率が3割以上の既存共同住宅であれば、宅配ボックスの設置工事に対して最大50万円の補助を受けられる仕組みがあります。宅配ボックスは子育て世帯にとって利便性の高い設備であり、入居者満足度の向上という観点からも、補助を活用した導入は検討に値する選択肢です。
なお、東京都が実施している「『子供を守る』住宅確保促進事業」という似た名称の制度もありますが、これは分譲マンションの区分所有者や、賃貸マンションに実際に居住している入居者本人を対象としたものであり、賃貸オーナーが改修主体として申請できる制度ではありません。ベランダの転落防止柵や窓の補助錠設置など、内容自体は賃貸物件のオーナーにも関係が深いものですが、申請者はあくまで「そこに住んでいる人」という点を取り違えないようにする必要があります。同じ「子育て」「子供を守る」という言葉を使った制度でも、申請主体が国の事業はオーナー、都の事業は入居者と、まったく異なるという点は、混同しやすい落とし穴です。
防犯カメラ等の補助金——「オーナー設置」は対象外になりやすい
前回の記事で防犯対策について取り上げましたが、防犯カメラなどの設備導入を補助金で支援する制度は、多くの自治体に存在します。しかし、ここにも申請者に関する重要な注意点があります。
複数の自治体の制度を確認すると、共通して見られる条件があります。賃貸住宅の場合は所有者の同意が必要とされる一方、賃貸人であるオーナーなど実際に居住していない方が設置した場合は補助対象外と明記されている自治体が多いのです。また、共同住宅のエントランスなど共用部分に設置する防犯カメラについても、補助対象外とする自治体が一般的です。
つまり、これらの制度は基本的に「個人の住戸に住んでいる入居者本人が、自分の住まいの防犯のために設置する場合」を想定した制度であり、オーナーが物件全体の資産価値向上や空室対策のために共用部に防犯カメラを設置するケースには使えないことがほとんどです。共用部の防犯投資を検討する場合は、こうした個人向け補助金とは別に、管理会社や工事会社経由でオーナー自身の資金で実施するのが基本的な前提になると考えておく必要があります。一部の自治体では集合住宅の各戸の住人単位での申請を認めている例もあるため、物件所在地の自治体の制度を個別に確認することをおすすめします。
補助金活用の実務上の注意点
ここまで見てきた制度に共通する実務上の注意点を整理します。
まず、ほとんどの国の補助制度は、工事を発注するオーナー本人ではなく、その事業に事前登録された施工事業者が申請者となる仕組みです。利用を検討する際は、まず候補となるリフォーム会社や設備工事会社が、その補助事業に登録された事業者であるかどうかを確認する必要があります。
次に、補助金には予算の上限があり、申請額が上限に達した時点で受付が終了する仕組みが採用されています。過去の住宅補助金制度でも、申請開始から数か月で受付が終了したケースが報告されています。リフォームや設備交換の計画がある場合は、年度の早い時期に情報収集を始め、施工事業者との調整を進めておくことが望ましいでしょう。
最後に、複数の補助制度は条件次第で併用が可能です。みらいエコ住宅2026事業と賃貸集合給湯省エネ2026事業は、補助対象が重複しない範囲で併用が認められています。ひとつの大規模リフォームの中で、断熱改修と給湯器交換を同時に行うような計画であれば、複数の制度を組み合わせることで、実質的な工事コストをさらに抑えられる可能性があります。
まとめ:補助金は「誰のための制度か」を見極めることから
今回見てきたように、住宅関連の補助金・助成金は、その対象が「住宅を所有するオーナー」なのか、「実際にそこに住む入居者」なのかによって、活用できる制度が大きく異なります。同じ「住宅の安全」や「子育て支援」というテーマであっても、国の制度はオーナーが主体、自治体の制度は入居者が主体というケースが多く見られ、この前提を取り違えると、せっかく見つけた制度が結局使えないという結果になってしまいます。
これまで4回にわたってお届けしてきた、敷金精算、ペット可導入、防犯対策、そして補助金・助成金というテーマは、いずれも単独で完結するものではなく、互いに結びついています。たとえば、給湯省エネ制度を活用した設備更新は物件の競争力を高め、子育て支援型共同住宅推進事業の活用は子育て世帯向けの空室対策につながります。賃貸経営を取り巻く制度や市場のデータを正しく理解し、組み合わせて活用していくことが、これからの賃貸経営において求められる視点だと考えています。
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